■ESCO用語解説
  ● 省エネルギー診断
  ● パフォーマンス契約
  ● ギャランティード・セイビングス契約
  ● シェアド・セイビングス契約
  ● サード・パーティー・ファイナンス (Third Party Finance)
  ● 計測・検証(Measurement & Verification あるいは Monitoring & Verification:M&V)
  ● ベースライン

省エネルギー診断

 ESCO事業では対象物件の省エネルギー可能性を検討する為に、省エネルギー診断を行う。省エネルギー診断には簡易省エネ診断と、詳細省エネ診断とがあるが、簡易省エネ診断は1〜数日で、既存データの分析及び現地調査を行い、省エネ改修項目とその省エネ効果、投資規模等を顧客に報告する。簡易省エネ診断は、1〜数日で行うことからウォークスルー調査と呼ぶことがある。簡易省エネ診断は、初期の段階で事業実施すべきかどうかを判断する為に行う調査であり、この結果、事業実施についてESCOと顧客が概ね合意でき、さらに詳細な調査が必要な場合は詳細省エネ診断を行う。
 一般に、簡易省エネ診断は無料で行われ、詳細省エネ診断は有料のサービスとなる。
 省エネ診断は、グリーン購入法の役務の調達品目に指定されており、政府機関での採用が検討されており、地方自治体では既に実施例が報告されている。また(財)省エネルギーセンターでは無料の省エネ診断サービスを行っている。

パフォーマンス契約

 省エネルギー改修工事におけるパフォーマンス契約とは、省エネルギー改修工事により実現する経費削減分で工事費・金利負担分(融資を受ける場合は金融機関への返済分)工事請負業者の経費などの全てを賄うことを保証し、これが実現しない部分については工事請負業者が損失補填を行う契約をいう。
 この際の契約には以下の項目が明記される。
  ・顧客の負担する経費の内訳
  ・保証する削減金額
  ・削減額の計算方法
  ・保証した削減金額が顧客の負担する経費を下回る場合は、工事請負業者が顧客の損失総額を補償する
 ESCO事業は、パフォーマンス契約に基づく省エネ改修工事を行う。パフォーマンス契約を行うことは、顧客の利益保証を行うことになるが、金融機関にとってはプロジェクトファイナンスを行う際のリスクヘッジの機能を持つ。プロジェクトファイナンスは資産等の担保を必要としないことから、事業実施者にとっては新たな融資枠を確保することになり、通常の融資枠にとらわれず、事業の採算性で実施の可否を判断することができる。従って、ESCO事業にとって、パフォーマンス契約とプロジェクトファイナンスは、回収期間の長い省エネ改修工事を行う上で非常に重要な役割を果たす。

ギャランティード・セイビングス契約

 ESCO事業の契約には事業の内容、計測・検証方法の合意、顧客に対する保証など、通常の請負工事にはみられない項目が含まれる。また、顧客が融資を受けるか、ESCOが融資を受け、顧客に投資するかによっても、契約形態が大きく異なる。このような契約をパフォーマンス契約とよんでいるが、契約は大きくギャランティード・セイビングス契約とシェアド・セイビングス契約に分かれる。
ギャランティード・セイビングス契約では、実際の金融負担は顧客が負うが、ESCOは顧客に対し省エネルギー改修による節減額を保証し、利益補償を行うことから、現実的には顧客に経済的な負担を強いることはない。この場合顧客は一定金額をESCOのサービスに対して支払い、当初の計画以上の省エネルギー効果が得られた場合の利益は原則的に顧客が受け取る。
 ギャランティード・セイビングス契約の特徴は、顧客とESCOの関係、顧客と金融機関の関係に分けることができる。
 ・ESCOは顧客に対し改修工事実施による節減額を保証する。
 ・顧客が改修工事の建設資金を確保する。
 ・顧客は改修工事が実現する節減額から一定額をESCOに支払う。
顧客とESCOの間にはパフォーマンス契約が交わされ、顧客と金融機関の間には、融資に関する契約が交わされる。また、顧客が支払う金額は以下のとおりである。
 ・ESCOに対する一定額のESCO報酬
 ・融資元への返済
 ・自己資金を投入した場合はこの回収
 プロジェクトファイナンスを適用するには、金融機関のリスクを回避する為に、顧客の利益補償を契約に盛り込むことが必要になる。利益保証の最低ラインは、経費節減額が借入金の償還を下回らない(自己資金の場合はその回収)額であるが、これに一定額の顧客の利益を見込む。この契約を結ぶことで、資産などの担保に拠ることなく借入金の償還が保証される。


ギャランティード・セイビングス契約の資金フロー
注)プロジェクトファイナンスが適用される場合は担保を必要としない。
シェアド・セイビングス契約

 ESCOが行うパフォーマンス契約の一つの形態である。
 シェアド・セイビングス契約では、金融機関からの借り入れをESCOが行う。従って、顧客は一切のリスクを負わないことになる。
 シェアド・セイビングス契約の特徴はESCOと顧客の関係、ESCOと金融機関の関係に分けることができる。
・ESCOは顧客に対し改修工事実施による節減額を保証する。
・ESCOが改修工事の建設資金を提供する。
・顧客は改修工事で実現する節減額から一定割合をESCOに支払う。
 ESCOと顧客の間にはパフォーマンス契約が結ばれ、ESCOと金融機関は融資に付随する契約を結ぶ。この際、顧客は一切の金融負担を負わないことになる。
 シェアド・セイビングス契約の場合のパフォーマンス補償は、改修前に比べ経費が増大しない範囲となる。ギャランティード・セイビングス契約では、償還金を含むのに対し大きく異なる点である。
 また、顧客からESCOへの支払いは、節減額の一定割合となるのが原則である。一定額とした場合、顧客の負担上限がほぼ確定することになり、顧客には省エネルギーの実現努力に対するインセンティブが付与されにくい。一方、一定割合とした場合は、節減効果が大きいほど、顧客の利益も増大することになるためである。

 シェアド・セイビングス契約の場合、金融機関のリスクはESCOの与信リスクとパフォーナンスリスクの両者となる。また、ESCOが保証を行う顧客は、融資の当事者では無いことから、プロジェクトファイナンスのリスク回避が事業の採算性以外には明確にならない。従って、ギャランティード・セイビングス契約と比べ、プロジェクトファイナンスが適用される可能性は低くなるものと考えられる。ただし、自治体を対象とした場合は、与信を非常に高く評価することができることから、プロジェクト・ファイナンスが実施される可能性は高いものと考えられる。


シェアド・セイビングス契約の資金フロー
サード・パーティー・ファイナンス (Third Party Finance)

 第3者が出資し、事業に投資するもので、ヨーロッパではESCO事業のようなパフォーマンス契約による省エネ改修工事及び、エネルギー供給事業をサード・パーティー・ファイナンス(TPF)と呼んでいた。顧客の代わりにファイナンスを行うことからTPFと呼ぶが、財政面、金融面のサポートが中心である。
 ただし、TPFを事業化するためには、エンジニアリング、設備調達、エネルギーの選択、金融、財務などのノウハウが必要になる。従ってこれらのノウハウを自社で蓄積するか、あるいは、パートナーと協力して業務を遂行する必要がある。TPFは、これらのノウハウを包括的に顧客に提供するものであり、これは米国におけるESCOの考え方と同様である。またその業務の中心は、技術面、投資の実現化、プロジェクト管理、金融のアレンジであり、顧客、金融機関両者に納得のいくプロジェクト設計を行うことが必要になる。TPFの特徴を以下に示す。
・ TPFがリスクを負う
・ 資金を調達する
・ プロジェクトの採算性が重要(パフォーマンス・ベース)
・ 一般の融資は企業の業績が重視されるが、プロジェクトのパフォーマンスがより重要視される
・ TPFで必要なキャッシュフローが確保できる


TPFの組織方法
計測・検証(Measurement & Verification あるいは Monitoring & Verification:M&V)

 省エネルギー改修工事の効果を評価するための手法である。ESCO(Energy Service Company)事業では省エネルギー効果を保証し、予想した効果が得られない場合は顧客の損失分を補償する契約を取り交わす。この際の省エネルギー効果を推計する手法として開発されたものである。
 この他、米国DOE(Department of Energy)とNAESCO(National Association of Energy Service Companies)が行った調査によると、計測・検証が適切に行われている事業の省エネルギー効果は一般に高く、またその効果が持続するという結果が得られている。つまり、計測・検証を明確に行うことは、省エネルギーの実現を長期にわたって保証する効果を持つと考えられている。
 計測・検証の目的は以下に示すとおりである。
  (1) ESCOへの支払い金額を明確にする。
  (2) 設備の効率的な稼働。
  (3) ESCOの行う削減量の保証の信憑性を高める。
  (4) 第三者による保証が行われない際、投資家が事業の効果を適切に評価することを可能にする。


資料)G.H.Kats,A.H.Rosenfeld,S.A.McGraghan, 1997, Energy Efficiency as a Commodity: the Emergence of a Secondary Market for Efficiency Savings in Commercial Buildings, Proceedings of ECEEE Summer Study

 省エネルギー効果の評価は、省エネルギー改善工事が行われなかった場合のエネルギー消費(ベースライン)を推計し、これと実際のエネルギー消費を比較する。この際ベースラインが変動することもある。これらを全て正確に把握するには、計測を含む十分な期間のデータ収集が必要になる。従って、最も適切と考えられる省エネルギー効果の推計方法を、顧客とESCOがコスト面を含め合意することが重要になる。
 一般に計測・検証を行うには以下のような手順で行う。
  (1) ESCO契約に合意するために、一般的な計測・検証の手法を決定する。
  (2) 省エネルギー改善計画の提出と、契約の調印が行われた段階で、導入する省エネルギー技術毎に計測・検証計画を合意する。
  (3) ベースラインのエネルギー消費量を推計する。
  (4) 設備設置後(改修工事後)のエネルギー消費量を推計する。
  (5) 契約期間中のエネルギー節減量を推計する。
  (6) 契約期間中、毎年計測・検証を実施し、省エネルギー効果を確認するともに、ESCOへの支払額を決定する。  エネルギー消費は設備の容量、効率、稼働時間で決まる。これらが一定の場合と変動する場合では、省エネルギー効果の評価手法やその難易度が異なる。また、高効率の照明に変更した場合、空調負荷が変化(冷房負荷の減少と暖房負荷の増加)するなどの相互作用もある。計測・検証を行う場合には、これを考慮して評価手法を選択することが必要である。
 計測・検証は以下に示す4つのオプションに分類することができる。このようなオプションを提示し、M&Vの普及を目的に作成されたガイドラインをM&VP(Measurement & Verification Protocol)といい、米国のDOE(Department of Energy)が開発したIPMVP(International Measurement & Verification Protocol:http://www.ipmvp.org)が代表的である。
 オプションA:簡易な手法(短期計測を含む)
 オプションB:長期計測による手法
 オプションC:統計的処理による手法
 オプションD:シミュレーションによる手法
 (資料:IPMVP:DOE, 1997, International Measurement and Verification Protocol)

計測・検証のオプション
オプションA オプションB オプションC オプションD
計測・検証の対象 ・導入した手法毎に評価する
・システムの負荷変動が小さい
・システムの年間運転時間が一定
・導入した省エネ手法毎に評価する
・システムの負荷変動が大きい
・システムの年間稼働時間が変化する
・導入した省エネ手法をシステム又は建物全体で捉える ・導入した省エネ手法を、システム全体あるいは建物全体で捉える
ベースラインの設定 ・カタログ値、あるいは瞬間計測 ・機器毎の消費量を短期(数日から数ヶ月)計測する ・機器毎の計測はしない。ただし、部分的な短期計測を行う場合がある ・機器毎の計測はしない。ただし、部分的な短期計測を行う場合がある
・機器の性能に年間運転時間を乗じて求める 計測結果より消費量を算定(必要に応じて変動要因との関係を数式化) 改修前の運転実績データ(3年間程度)から消費量の推計式を開発する(統計解析によるモデル化) 改修前の運転実績データ(3年間程度)よりシミュレーターの係数を調整
改修後の消費量の把握 ・検証を必要としない、あるいは、短期計測で機器特性に変化の無いことを確認 機器別消費量を長期計測 統計処理による。ただし、部分的に短期/長期の計測を行う場合がある シミュレーターによる解析。ただし、シミュレーターの係数などを調整する必要がある
改修後の検証 ベースラインと改修後の消費量(実績/推計値)から求める

ベースライン

 ベースラインとは、省エネルギー改修以前のエネルギー消費ないしは光熱費支出をいう。改修後のエネルギー消費とベースラインを比較することで省エネルギー効果の判断が可能となる。
 ベースラインの設定には、通常3年間程度の料金請求書あるいはエネルギー消費実績で概ね把握することができると言われている。これは、建物全体での省エネルギー効果を大雑把に把握する場合であり、この際のベースラインは建物のエネルギー消費で設定する。
 一方、通常ESCO事業が行う省エネルギー改修工事は建物の一部の改修となる。また導入する省エネルギー手法も複数になる場合が多くなる。例えば、高効率照明機器への変更と、空調設備の高効率化、空調制御方法の更新の組み合わせなどである。空調制御方法を更新した場合は、空調熱源と空調動力、両者の省エネルギーに寄与するが、部屋の稼働状況、気候の変化等によってエネルギー消費は変化する。この時、照明用電力消費は稼働時間の影響は受けるが、気温の影響は受けない。このように、複数の省エネルギー手法を導入した場合、建物全体でベースラインを設定しても、省エネルギー効果を正確に把握することは困難になる。このような場合には、導入する省エネルギー手法毎にベースラインを設定することが必要になる。
 ベースラインの設定は、改修工事の計画時に省エネルギー効果を推計する際に必要になる。この段階で数日から数ヶ月の実測を伴うデータ収集を行うことも考えられるが、通常の場合、詳細なデータを収集することは困難である。このような際には、改修工事終了後、部分的な実測を行うなどデータを補完し、ベースラインの設定を見直すことも必要である。このような作業をベースラインの調整という。